HANZA
【エアーテックス・ハンドピース 281/381】

発表されてからコッチ、リリース当時から使ってるのでかれこれ10年来のお付き合い。自分が使いやすいので聞かれれば勧める道具なワケだけど、しかしてみんなが手にフィットするかと言えばそういうものでもないかと思う。
まぁソコは自身で使いやすいのを選んでくださいって事で、ココはHANZAのシリーズを使っている人に向けてのページです。悪しからず。

因みに怪物屋でもHANZAは勧められると思うが、店長が本心でオススメってくるのは「田宮模型のスプレーワークHG-トリガータイプ」。

射出レバーが下付きなので長時間のスプレーワークでも疲れ無い。また怪物屋的な塗り方をする場合ハンドリングが非常に良いって事です。

コレを自分が使った印象ではモンスター&クリーチャーや怪獣、1/1のヘッドモデルなど大型のものに特に適しているって感じ。 逆に繊細な作業が必要な美少女系をはじめとするお姉系なんかでは使いづらいかと。といって、店長なんかはどんなもんでも器用にすべてをコレでこなしちゃうけども。 要は手に合ったもので使いこなせたらなんでも良いって事ですね(笑)。

マズは自分がなぜHANZAを使いやすいと感じるか?の最大の理由は「トリガーアクションで有りながら、レバーが上付き」だから。「ダブル・アクション」と同じような感覚で使える「トリガーアクション」ってのが超GOODなんですよね。

「レバーを押してエアーを供給し、引いて塗料を射出する」ダブル・アクションが相変わらずハンドピースの主流なわけだけど、それはやはり使いやすいフォルムだからだと思うんス。しかしダブルアクションの弱点で有る「毎」初回射出に伴う塗料の飛沫に泣いたモデラーも多いと思います。初回のエアー供給時に何気に塗粒がまじってしまうんですよね。 

よって一度吹きつける対象物から離した状態でエアーを出し、その後に吹きつける位置にもってきてから塗料の射出をはじめるという、作業的にも「ダブルアクション」になる。コレは慣れれば「考えるまでもなく体がそう動く」ようになるワケだけど、気を許したら「あっ!」なんて事も否めません。
またエアー供給から塗料射出への移行時には、エアー供給の「押す」というアクションをホールドしながら「引く」と言う塗料射出へと移らねばならず、スムーズな「塗料射出の入り」をする為にはまぁまぁ慣れが必要になってくると思います。この辺のコントロールも意外にデリケートなので、これまた気を許したら「あっ!」なんて事も。

肌ムラの演出をする為には「塗料射出」と「止め」を繰り返さないとイケないので、上記の作業をを繰り返す必要があります。しかも1秒に数回は止めて出すと言う事を延々と繰り返すワケで、だからそういう塗装を良くする怪物屋や自分なんかはトリガーでないと超シンドイんですね。

以上の事が全くなくなるとまでは言わないまでも、トリガーアクションなら構造上そういうことが起こりにくくなっていると思います。エアー供給から塗料射出までの動作は「レバーを引くだけ」、自然にエアーから塗料射出へと移行するしくみなんですねぇ。どの時点で塗料射出に切り替わるか?のいわゆる「あそび」もハンドピース後部のネジを回すことで任意に調整できます(コレはテールキャップ内部にあります)。自分の吹き方に応じた調整がしやすいって点でもオススメなんですよ。

因みに構造もダブルアクションよりシンプルなんじゃないか?なんて思いますね。HANZAの場合は・・・ですが。
さて、と言って「ノントラブルか?」と聞かれればやはりそれなりに問題は出てきます。特に頻繁に使う自分のような商売をしている人間の場合は。
その殆どの理由が摩耗による部品の不具合と、最も大きな理由は「メンテナンス不足」ですね。そんなしょっちゅう問題が起こるわけではないけども、良く使うって人はやはりその辺はキッチリとリカバーできないとマズかろう?って事で。

今は無いけど「ノズル用Oリング」の脆さで、不具合が多々起こってました。水性塗料を使う前提で開発されたであろうこのハンドピースに溶剤をぶち込むワケなので、その溶解力によってOリングが侵食されてしまうって現象ですね。侵食されるとどうなるか?と言うと塗料が漏れます。だけでなく、侵食されて欠落したゴムのカスがノズルを詰めるなんて事も。
現在は「強化型Oリング」に装換されてて、そうなることは有りません。
ただ、溶剤に直接晒されるOリングはカップと本体とのジョイント部分にも使われていて、このOリングが上記のような問題を起こしてました。
以上は自分の数年前の体験談なので今はここも強化型に変わっているのかどうなのかは判らないです・・・と言うのも、自分はそこのOリングは外しているから。外すことによってのデメリットはOリングが治まるべき場所にスリットが入ってて、そこもクリーニングしておかないと固着した塗料がある日突然詰まる原因になるって事。ま、綺麗に掃除をしてたらナカナカそうはならないんですけどね。
上記は特に書く必要も無いことだとは思うけど、一応書いておいた。問題は次。

【シングルアクションよろしく塗料がいきなり射出されてしまう】

大問題です。コレは昔から有ったし、今でも度々起こる。しかもその原因が良く分からない・・・と言う事で実際にエアーテックスのメンテの人に直接話を聞くも解消せず。コレはホントかなわん話なんだけど、エアーテックスで原因がわからんかったらユーザーはどうしたらエエねん!と(>_<)。

ソレでほんとに困るのは自分、サラリーマンをアテにしても仕方ないって事で色々いじくって原因を究明しましたョ。なんの事は無い「メンテナンス不足」が原因です(笑)。エアーテックスの人に文句をいう筋合いは無い理由では有るけれど、それが指摘出来なかったったってのはプロとしてどうかと思うよ・・・ってのは変わらない。だって向こうが指摘した原因と思しき部分ってまるで関係なかったから。その為にソコの部品を買ったってのにどういうこった!と。
(原因その1)

上図解「1-a」、ノズル内部の塗料づまり。コレが恐らく最大の原因。こんなとこまでクリーニングするのって数回に1回だろうと思うけど、そのクリーニングが行き届いて無かったとしたら、固着塗料が内部の径を狭くする要因となります。 ソコにニードルが通り、エアー供給時点では本来は栓をしています。そのニードルを引く事ではじめて塗料射出となるわけだけど、このノズル内部に固着塗料が詰まっていたらニードルによる栓が不十分になる。

この細いノズルから塗料を拡散させるだけのエアーを供給しているわけで、この径にしてその圧力は結構なもんでしょう。よってキッチリと栓がされてない状態で、エアー供給をするとソレがチョロ漏れでもしょっぱなから塗料射出が始まってしまうって寸法です。

リカバー方法としては2つ。

@ツールクリーナーなどの強めの溶剤に浸け込むなどして固着塗料を溶解、以後に針などを利用して徹底的にノズル内部を洗浄する。この際の注意点はノズル径を広げてしまわない事。広げてしまうとニードルがフィットしなくなるので結局塗料が漏れると言う事に。

A上記が出来ないほどの状態になっている、もしくは@の作業中にやってしまった(径を広げてしまった)場合は部品交換。

(原因その2)
上図解「1-b」、ニードル曲り。ニードル先が曲がっているとやはりノズルの栓が不十分になります。またニードルの方が固い素材なので、ソコを出入りするとノズル径を広げてしまう。この場合のリカバー方法も2つ。

@ニードルを交換する。コレがお勧めなんスが、腕に自信がある人はAをトライしてみては?

A曲りを強制後に研ぐ。コレは芯を捕えて強制出来た上で傾斜を変えずに研げるって人ならOK。そこまでシビアで無いにしても、この出来如何でノズル径を変えてしまう恐れが有るので慎重に。 ・・・んでは次。

【スムーズなトリガーアクションと言うけれど、エアー→塗料への調節が意外に難しい】

・・・と友人に言われた事が有る。吹付け位置をロックオンしてから(エアー供給で目星をつけながら)スムーズに塗料射出に移行できる・・・と言うのは、いわゆる「筆の入りをなめらかにする」と言う事。「抜き」に関してはどんなエアブラシを使っても出来るが、この「入り」が上手くいくのがトリガーアクションの強みだと思う。ココが上手くいかないってのはトリガーアクションのエアブラシとしてはとっても問題ですね。

その事を聞いて「もしかしたら個体差が有るのかも?」と。 というのも自分は同機種を数本所有していて、そのどれもが初回使用時の感覚が微妙に違ってた気がするから。もちろん02と03で使用感が違うのは当然なんだけど、そう言う事では無くトリガーアクションとしてのフィーリングが微妙に違う感じ。
そしてソレを使い続けて行くうちに、そのフィーリングの違いが拡大して行きます。「癖」がついて行くんですよね。それが自分向きの良い方向に進んで行く場合はラッキーなんだけど、その逆に向かうと使えなくなってしまうわけです。
いま自分がメインに使っているのは「HANZA281」なんスが、コレがまさしく「使えない」方向へ突っ走ってました。「過去形」で書いたのはソレを使いやすい方向へ修正し、今では最も使いやすい個体となっているから。

そらスムーズに塗料射出へ移行しますよ〜、他のピースは使えないってくらいに。 で、要点です。結局ココの部分に影響を与えるパーツは2ヵ所なんですね。上図解の「2-a」「2-b」がソレです。「218195・メインレバー」なんスが、重要なのはその部品の下部背面と「218093・ニードルガイド」って部品前面との接触部分。素材の違いから使用頻度によってメインレバーの下部背面をほじくり返し、手癖と相まってスムーズに塗料射出に移行しないって現象が起きます。

このリカバー方はちょっと勇気が居るので、ちょっとなぁ・・・って思う人は部品交換をお勧めします。

かなり細かい吹付け作業が連日のように続いたある日の事。この281のレバーがゴリゴリしている気がしました。気がしたのではなく実際にゴリゴリだったのは解体してから判ったんですが、上記の部位に変な彫り跡が・・・。

相当リキんでスプレーワークしてたんでしょうねぇ、件の接触部分の彫れ方の不規則な事といったら無かったです。
ココまでガタガタなら使えないな・・・との判断の元、ダメ元でスムージングしてやろうって気になりました。

丁度切削能力の高い「クロス・ワークス」さんのリュータービットを各種揃えているので、それらでチョンチョンと右画像の部分を成型。その後グリスを塗ってセットしたらよみがえりました。・・・と言うより最初より良くなってる感じ。

エアー供給から塗料射出の境目がほどんど判らなくなり、その事で初回射出のストレスを一切感じなくなりました。これぞまさにトリガーアクションの真骨頂てコンディションに生まれ変わった次第です。

※画像は撮影の都合上、上下が逆になってます。
【最後に】

さてHANZAオーナーとしての注意点ですが、不具合などは上記の2点に集約されるされると思います。ツカ、10年近く使ってきて上記の2点位しか弱点が見当たりません。弱点ってもソレはハンドピースのせいでは無く、原因は使う側の方に起因するものですし、よって名器と言って良いと思います。
当り前の事ですが、洗浄とメンテナンス、事によったら部品交換によって少なくとも10年単位で現役バリバリってのがHANZAです。その他のハンドピースをこれだけ長期間・フル稼働させた事は無いので比べることは出来ないんスが、まぁ買って損は無いと実感を伴ってお勧めできるエアブラシって事で。少々高いけど、自分なんかは完璧に元取ってます(笑)。

実際に自分がガンガン使っているのが下のヤツ。年期入ってる感じでしょ?ちなみにハンザの売りで有る空気を対流させて塗料だまりを防ぐ「218795・ニードルキャップ」は使ってません。自分は「ニードルむき出しで使う派」なので、オリンポスのニードルキャップを装着。まさにニードルを保護する」のと「うがい」の時だけのモノです。よって、ネジを切ってないそういう用途のみのオプションパーツを作ってくれんかのう・・・と。(自分で作ればええんですけどネ)
ニードルキャップつながりで便利なアタッチメントも紹介しておこう。画像のは「砂目吹き専用キャップ」。ハンザの先端パーツの構成は先っちょからニードルキャップ・ノズルキャップ・ノズルとなっているが、この部分を外して「ノズル」のみをこの砂目吹き専用キャップの内部に仕込んでとりつけます。
ノズル先端の外側に結構なクリアランスを確保したキャップなので、塗料射出時の塗粒が大きくなります。

画像のは3ミリ用ですが。この他「2ミリ」「4ミリ」用も有り。

これによって均等な砂目模様を吹きつける事が出来るワケで、更に空気圧を変える事でまぁまぁな範囲の大きさの砂目塗装が出来るって塩梅。
表現方法の一つとして面白い効果が出るので、一度使ってみては如何かと。
(この方法を使った作例はコッチ。効果が判れば砂的な表現をする為のものって先入観はなくなるかな?名称は単に例えばって事なんですよネ)

自分的には2ミリの砂目が必要か疑問では有るけど、4ミリは是非使ってみたいなぁて感じ。ただソレをするなら4ミリのハンザを買わないとアカンけども^^;。


こうやって個別にページを作ったけど、だから「コレを使いなさい」というつもりは無く、あくまでも紹介です。ただ一つ、腕に自信がない人は特に良いものを使った方が良いとは言える。自分の腕の足りない部分を良い道具は有るていど補てんしてくれるので。「まだ初心者だから良い道具は必要ない」ってのは逆の考え。思いのほか上手く出来たら次もやろうって気になるし、それを続けて行けばいずれ「道具のおかげ」って事では無くなります。
既に腕のある人はその域に達してるんだと思うけど、だったら今度は使う道具をキッチリ整備しときましょう。でないと持ってる力を発揮できなくなるので。

ほんでは皆さん良いもんを作りましょ〜♪

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